コスタリカに軍は必要ない。
なぜなら敵がいないから。
平和というのは戦争がないということではない。
貧しい人たちを虐(しいた)げないということだ。
このセリフがずっしりと心に響きました。
中立を貫くために大きな代償を払っているという事実。
それでもアメリカの圧力をはねのけたコスタリカ。
どうしても日本の政治の未熟さが重なって見えてきます。
コロナでいろいろな立場の人たちが救いを求めているのに、防衛費はさらに増額されています。
国民の声が政府には届いていないのでしょうか。
全編を通して「私たちの国はこういう未来を築くのだ」というコスタリカの人々の強い思いが伝わってきます。
ゴールをしっかりと共有して、そこから必要なプロセスを考えて実行していくバックキャスティングの発想があるからこそ、国が一つにまとまっているのかもしれません。
私たちの身近な政治は、目先の利益を追うことばかり。
その先にある未来像を私たちにはっきりと示してくれることはありません。
大統領が間違った道を歩んだ時は、国民が力を合わせて元の道に戻す。
政治は政治家のものではなく、国民のものであることをあらためて実感しました。
ニカラグアが侵略してきた際も、報復するのではなく国際司法裁判に判断を委ねます。
「法と道徳はどんな兵器よりも強い」という元大統領の言葉には、法への絶対的な信頼がありました。
12月8日に40年目を迎えたジョンレノンの命日。
今こそイマジンの歌詞の世界を実現する時なのかもしれません。
Imagine there's no countries
It isn't hard to do
その後継者たちは、教育や医療、福祉を充実させることで、非武装を「文化」
にまで昇華させた。
21世紀の現在、彼らは環境問題に取り組むことで、その文化をさらに発展させようとしている。
コスタリカ人たちは、非武装による平和という「文化」を共有している。
あたかも、あらゆる日本人が桜を愛でるかのように。
フィゲーレスの政敵であった人たちさえもその例外ではない。
非武装は決して非現実的な夢想ではない。
かといって、平和はどこかから降ってくるものでもない。
平和とは、常に何かに脅かされる脆いものだからだ。
だからこそ、「自ら常に前に向かおうとする文化」が最大の武器になる。
長年の苦闘の末コスタリカ人たちがたどり着いたその境地は、マハトマ・ガンジーやマーチン・ルーサー・キング・Jrが出した結論と重なり合う。
文化とは、「誰にでも共有可能な無形物」だ。
だったら、私も、あなたも、その文化を共有できるのではないか。
それが世界中に広まれば、戦争も貧困もなくなるのではないか。
この映画は、そういった希望のヒントを提供してくれる。
- 足立力也(『丸腰国家―軍隊を放棄したコスタリカの平和戦略― 』著者)