「少女アマル」が問いかけたもの―難民を『数字』『問題』としてではなく、一人の人として見る社会へ」映画「ザ・ウォーク 少女アマル」を観ました。
主人公は、戦争によって故郷を追われたシリア難民の少女を象徴する高さ3.5メートルの人形「アマル」。
ヨーロッパ各地を歩く彼女を迎える人々の姿には希望がありました。一方で、難民を拒絶するデモや、憎しみをあおるヘイトスピーチ、石を投げるなどの暴力行為の場面には、胸が締め付けられました。
アマルは、一部のキリスト教信者にとっては、異教徒の象徴であり、テロの要因として標的にされていました。ある意味、人形アマルの視点を通して、まるで自分がそう扱われているかのように感じることができました。
難民は、決して「問題」や「数字」ではありません。
戦争や迫害、暴力によって、故郷を追われ、それぞれに異なる背景を持つ一人ひとりの人間です。
世界では今なお多くの人々が紛争や迫害によって避難を余儀なくされ、子どもも大きな割合を占めています。ヨーロッパでは、難民は豊かな国ばかりではなく、逆風はありつつも、多くの国で受け入れられています。
一方、日本の難民受け入れは依然として限定的です。
2024、2025年とも、日本で難民認定された人は190人程度。過去最高だった前年より減少し、世界全体から見ると決して多い人数とは言えません。
もちろん、難民認にはルールが必要です。安全保障や制度の信頼性も大切です。
しかし、それとヘイトスピーチはまったく別の問題です。
異なる意見を持つことと、人の尊厳を傷つける言葉を浴びせることは違います。日本にはヘイトスピーチ解消法ができましたが、法律だけで、差別や偏見がなくなるわけではありません。昨今の状況は悪化しているように感じます。
だからこそ、こうしたドキュメンタリー映画を見ることも含めて、地域で出会い、知り、学ぶ機会をつくることが重要なのだと思います。
今回の上映会でも、鑑賞後にアンケートを書く時間が設けました。
みなさんからのご感想は以下のとおり
○子どもたちが大好きな人形、そのアマルを通して平和と幸福の象徴としたのが印象的
○戦争のない平和な世界に向かっての歩みは決して平坦ではないが努力し続けたい など
誰かと討論するのではなく、自分自身と対話する時間。私は、その時間こそが、この映画の大切な一部だったように感じています。
北海道にも外国にルーツを持つ人が増えています。
人口減少が進む地域だからこそ、多様な人々が安心して暮らせる地域づくりは、福祉や地域づくりとも深くつながっています。
「違い」を恐れる社会ではなく、「違い」を理解し、力にしようとする北海道へ。
アマルが歩いた道は、そのための一歩を私たちにも促しているようでした。
ヘイトスピーチを止めること。そして、一人ひとりの尊厳を守る社会をつくること。
それは難民だけの問題ではなく、私たち自身の社会の成熟度が問われているのだと思います。
宗教や文化の違いへの不安、あるいは先が見えないことに不安を抱く人がいることも理解しながら、それでもヘイトスピーチによって人の尊厳を傷つけることは決して許されない。民主主義社会では、意見の違いは対話で表現されるべきであり、憎悪の言葉であってはならないと改めて感じた映画でもありました。
次回は、「バーバラ・リーの闘い」9・11の後、たった1人戦争反対を訴えたアメリカの国会議員のドキュメンタリーです。














3.5メートルの少女アマルは、声を奪われた子どもたちの『祈り』を、風にのせて歩いてゆく。戦火の地から逃れ、たったひとりで世界を歩くその姿は、あまりに静かで、あまりに強い。手を差し出せば届きそうなその手は、たくさんの『助けて』と『忘れないで』を抱えていた。彼女が歩いた8000キロの道のりは、きっと涙の川を越えてきたのだろう。観る私たちの心に、問いを残す。いま、この世界に生きる者として、何ができるのか。これは、ただの旅ではない。アマルの歩みは、希望と尊厳を取り戻すための『いのちの行進』。どうか、耳をすませて。その一歩一歩に、子どもたちの未来が息づいているから。
――サヘル・ローズ(俳優・タレント)
ドキュメンタリー映画「ザ・ウォーク ~少女アマル、8000キロの旅~」は、シリア難民を象徴する巨大な少女の人形がシリアからヨーロッパを横断していく旅を捉えた作品。マケドニアやシリアにルーツを持つ監督、撮影監督も来日し、登場した難民の子どもたちが新しい生活を始めている後日談を紹介しながら「描かれた希望ではなく、希望は確かにそこに存在している」ことを強調されていたことが胸に迫りました。ぜひご覧ください。
――関根光才(映画監督)
アマル(希望)と名付けられた3.5メートルの人形が、難民の苦境を知ってもらう為シリアからヨーロッパを横断するシアタープロジェクトを芸術的に追ったドキュメンタリー作品。
難民の子供たちの目、「恥を知れ、来た場所に帰れ」と難民に理解のないヨーロッパ人たちの声、「帰れないのよ」というアマルの切ない声が、とても印象的な映画でした。
上映には監督と撮影監督も来日しており、日本の人々にメッセージを聞かれ、「もっとドキュメンタリー映画を見てください、難民問題は私たちが成長できるきっかけでもある」と話してくれたことが胸に響いています。
*Instagramより抜粋
――岡本多緒(俳優/モデル/映画監督)
「ザ・ウオーク~少女アマル8000キロの旅」は必見!その試みにまず度肝を抜かれ、主人公の少女だけではなく、観ている私たちもアマルに乗りうつったかのように、経験したことのない視点で世界を旅することになります。映画作品としても芸術性に優れているうえに、観ているひとの視点や心をここまで動かす「ザ・ウオーク」の挑戦をこの機会にぜひご覧いただきたいです。
――長野智子(キャスター・ジャーナリスト / 国連UNHCR協会理事)
https://unitedpeople.jp/walk/cmt