「ミッドナイト・トラベラー」に比べて、大変見やすい作品だった、という声が映画慣れ(日常的に映画を観ている)している参加者から挙がりました。やはり客観的な視点が入ってるか否かというのは重要なのではないか、ということです。主催者個人としては、物足りなさが残る内容でした。良くも悪くもCNNやBBCなどのニュースで報道される内容の延長線上にあるものでしかなく、戦争のない先進国側にいる人間がいくらこれを観てもリアリティを感じられないのではないか、と感じた次第です。 ドキュメンタリーにおいて、映画としての見やすさや面白さ(=派手な演出)を優先するのか、リアリティを追求するのかというのは常に悩ましい課題なのだと思います。本作が他と違うことがあるとすれば、製作側が100%のプロではないというか、少し私たち庶民の側の人間であるがゆえに、その葛藤も透けてみえてくるということでしょうか。そこにはまた、別のリアリティが生まれているようにも感じます。
終演後の感想シェア会の中で、話は教育に及びました。この映画で取り上げられてる難民キャンプは、市場もあるし仕事も作り出せているし、このまま街と同等の機能を持ち続けられればそこまでの問題ではないのではないか、という意見から始まり、まともな教育や医療が提供できないという反論に対して、そもそもまともな教育とは何か、既存の学校に行く価値とはなんなのか、という議論の流れです。
難民キャンプという非日常を通して私たちの日常を見直す、という意味では良作だと思います。一方で、主催者個人が「ミッドナイト・トラベラー」で感じたような、自分が人知れず難民となる可能性について考えを深めるという意味では少し噛み合わない面がありました(事前に分かっていたことではあります)。