あなたの知らないガザの人々の素顔
ガザ地区は紛争のイメージが強い場所
しかしここにも日常があり、普通の人々が暮らしている──。
「またいつ壊れてしまうかわからない束の間の平和を生きる日常。限られた自由と抑圧の中で、その運命と向き合う以外に選択肢のない人々の想いが激しく伝わってくる秀作。」
── 吉田美紀 (国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA) ガザ地域事務所職員)
「「ガザ」という二文字の向こう側で確かに存在する途方も無い数の不条理、虚無、喪失、葛藤、そして人々を生かす絆や信念に触れられる、貴重な作品です。遠くても出来ることがあると信じて動く、その第一歩目に。」
── 並木麻衣(日本国際ボランティアセンター(JVC)広報担当)
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© Canada Productions Inc., Real Films Ltd.
About the film
東京23区の6割ぐらいの狭い場所にパレスチナ人約200万人が暮らすガザでは人々が貧困にあえいでいる。
イスラエルが壁で囲み封鎖したため物資は不足し移動の自由もなく「天井のない監獄」と呼ばれる。
それでも日常を力強く生きようとする人々がいる──。
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サーファーにラッパー、40人子どもがいる漁師のおじいちゃんなど個性豊かな人々が登場
あなたはガザ地区と聞いたら、どんな場所をイメージするだろうか?「世界で最も危険な場所」「紛争地」「ミサイル」「戦車」など危険な戦争のイメージを思い浮かべるのではないだろうか?そんなあなたはこの映画で全く違うガザの一面を発見することだろう。穏やかで美しい地中海に面しているガザの気候は温暖で、花やイチゴの名産地。若者たちはサーフィンに興じ、ビーチには老若男女が訪れる。海辺のカフェの飛び切りハイテンションな店主に朝会えば、間違いなく誰もが幸せな一日を過ごせるはずだ。他にもタクシー内で歌う人々やあふれる想いを叫ぶ若いラッパーに、妻が3人、子どもが40人いる漁師のおじいちゃんなどが登場する。こんな個性豊かなガザの人々にきっと魅了されるに違いない。
「平和が欲しい。ただ普通に暮らしたい。」
しかし現実は過酷だ。東京23区の6割ぐらいの狭い場所にパレスチナ人約200万人が暮らすガザの住民の約7割が難民で貧困にあえいでいる。イスラエルはガザを壁で取り囲むのみならず、2007年以後は物資や人の移動も制限する封鎖政策を続けており、陸も海も空も自由が奪われたガザは「天井のない監獄」と呼ばれる。2014年と2018年の戦争では、多数の学校、病院、家屋、発電所などが破壊され、多くの命も失われるなど、ここには命の保証もない。それでも日常を力強く生きようとする人々がいる。19歳で現実逃避するためにチェロを奏でるカルマは海外留学して国際法や政治学を学びたいと考えている。14歳のアフマドの夢は大きな漁船の船長になり兄弟たちと一緒に漁に出ることだ。「欲しいのは平和と普通の生活」。ガザの人々は普通の暮らしを今日も夢見ている。
Data
原題 | Gaza | 製作年 | 2019年 |
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製作国 | アイルランド・カナダ・ドイツ | 制作 | |
配給 | ユナイテッドピープル | 時間 | 92分 |
Cast & Staff
監督 | ガリー・キーン、アンドリュー・マコーネル | 製作総指揮 | |
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プロデューサー | ブレンダン・J・バーン、ガリー・キーン、アンドリュー・マコーネル、ポール・カデュー | 原作 | |
脚本 | 音楽 | レイ・ファビ | |
撮影 | アンドリュー・マコーネル | 編集 | ミック・マホン |
キャスト |
Review(3)
─ 吉田美紀
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA) ガザ地域事務所職員
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「封鎖と紛争にさいなまれるガサ。でもそこに生きるのは生身の人間。海で泳いで、おしゃれして。私たちとどこも違わない人。そんな「人」が、パレスチナ紛争下を生きる苦しみ、恐怖、悲しみ、そして希望へのもがき。ウクライナ戦争が起きた今年にこそ、紛争下の「人びと」に目を向け、日本ができることを考えたい。」
─ 土井香苗
国際人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」(HRW)日本代表
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「「ガザ」という二文字の向こう側で確かに存在する途方も無い数の不条理、虚無、喪失、葛藤、そして人々を生かす絆や信念に触れられる、貴重な作品です。遠くても出来ることがあると信じて動く、その第一歩目に。」
─ 並木麻衣
日本国際ボランティアセンター(JVC)広報担当
上映会主催者の声
・起きていることが受け入れられない。パレスチナの人々の生活と自分の生活にギャップがあって混乱している。現実を自分の中につなげられない。
・毎月、北九州から福岡市に来てパレスチナに関するドキュメンタリー映画を観ている。日本でも政治は何をしているのかと思うことが多い。しかし諦めずに声を上げ続けていく。自分たちは無力ではない。
・ガザ地区の人々はより良い暮らしをしたいのかと思ったけど、(普通の)日常があればいいと望んでいる。日本人も科学技術を求めず、日常に幸せを得たらいいのでは?
・自分は戦前の生まれ。終戦時、中国では日本人が襲われたが、中国人への接し方が良かった人たちは中国人に助けられた。関係性が良ければ助けられる。ソ連兵は略奪し女性を襲った。戦争で負けた国には正義はない。自分の生き方を誇りとして持っていたら良い。
・映画の中で、女性が「若い時は兵士になろうと思っていたが、今は、武力では解決しないことに気付いた」と言っていた。やるせなさを感じた。沖縄にも通じる。
・祈りのある文化の人たちだが、希望が見いだせない。外の人が救えると思うが、自分たちはどうしたらいいのか。イスラエルを支援しているアメリカを日本は助けている。その流れをどうしたら止められるのか。
・政治は腰を上げない。今のままでは止められない。日本が立ち上がらないと何も変わらないと思う。
・救急救命士の「パレスチナ以外の全ての人に怒りを感じる」という言葉を突き付けられた気がする。自分たちで解決するのが基本だと思うが、この状況では外からの干渉が必要だと思う。原爆を他の人に体験させないようにと活動している方々がいるのに、なぜ武力を選ぶのか。
・言葉にできない。子どもが犠牲になった場面は衝撃的だった。子どもが先に死ぬのは想像できない。一番不幸なこと。
・どの戦争もそれぞれの言い分があるが、勝った方も負けた方も犠牲が大きい。歴史を学ばなければならない。
・イスラエルのことも気になっている。迫害され続けた歴史を持っているイスラエルの人々こそ平和を訴えるのに世界で一番相応しい人たちだと思うのに、なぜそうなっていくのか。戦争に勝者はいない。ウクライナでも女性と子どもが犠牲になっている。
・昨年中東に行った。自分と年齢が変わらない人が犠牲になった。生まれた場所が違うだけで、爆撃から逃げなければならない人たちがいる。パレスチナに住んでいるという理由だけで、その人は何もしていないのに殺される。アラブの人はそのアイデンティティーを理由にテロリストのように報道されているが、フレンドリーな人たちだった。
・考えさせられる。ウクライナ、ガザ、思ってもみなかったことが起きている。人間は進化していない。差別的なことはいけない。広島の被爆体験者の話では、被差別部落に救援の手は来なかったという。究極の状況でも人間は差別をするのだと思った。
・ガザの中でも貧富の差があることを知った。若者を含めて全員に希望がない。(壁に)石を投げても仕方ないのにやらざるを得ない状況がやるせない。中学2年の娘の立志式で、皆将来の希望を述べた。日本の子どもはいろいろな希望を持てるが、パレスチナは閉鎖されている状況。いろいろ考えさせられた。
・究極の状況で、自分に何が選択できるのか言えない。戦後何かしら後悔した人と同じようになるかも。年を経るごとに自分の非力さを感じる。
・世の中が良いほうに変わるかと思っていた。この世界に我が子を送り出すのをあきらめそうになるが、大河に一滴を落とそうと自分に言い聞かせている。
・イスラエルではどのように伝えられているのか。イスラエルでも国内で踏みにじられている人たちがいる。ロシアでも。属性では語れない。どこからの情報をどう聞くか。
・自分が住んでいる遠い国の問題で、できることがないと思っていないか。自分が住んでいる選挙地の政治家に一筆送ることが有効と聞いた。しかしハードルが高い。知恵をいただきたい。
・→ずいぶん前にアメリカの大統領宛に手紙を出したら、返事が届いた。こう思う、ということは出していい。
・他国の問題ではない。イスラエル空軍ではパレスチナを攻撃するべきだという教育受けると聞いた。教育の影響は大きい。
・日本に住んで家具職人として反戦運動をしている人に日本は好きかと聞いたら答えがなかった。私たちはパレスチナへの攻撃に疑問がなかったのではないか。その方が日本はいい国だと思ってくれたら嬉しい。何かできることがないかと思う。
・確かな情報を取る必要がある、と思った。
・普通の生活の重み、というのが自分の中に残った。本当の意味での自由がない。
・理不尽に命を奪われている人がいる。こんなことが起こるのはなぜなのか。戦争を止めるために自分ができることをする。こうやって映画を観て話したことがいろいろなことに繋がっていったらいい。
・死と隣り合わせ。これまでそんな生き方を自分はしていない。いろいろな物を持っているが、それでもまだ欲しいと思うことができる日常に感謝を。(救急救命士の言葉で)日本人のことも嫌われていることが刺さった。知らないこと、知ろうとしないことが罪だ。全部を知るのは無理だが、知ろうとしたい。
・救急救命士の「パレスチナ人以外の~」という言葉は、「あなたたちは、これを放っておいていいのか!」と自分に投げつけられたように感じた。知ることがそれに応える第一歩だと思う。
・反戦デモをいつしかやらなくなった。声を上げても変わらないということが溜まっていた。そのきつさを感じる日々の暮らしが続いている。戦争がないことを望んでいる。蓋をしないようにしたい。
・パレスチナの難民キャンプにいたことがある。女の子が「私がここにいることを忘れないで下さい」と私に言った。
・無関心はいけない。諦めずに声を上げていきたい。

6回目の「ガザ 素顔の日常」上映です。次々と起こる占領や災害にかき消されないよう、機会があるたびに忘れられることのないよう、上映を続けます。
上映後はプロキングをSPOSSA (https://spossa.org/)と実施しました。翌日の東京マラソンコースの一部、銀座、日本橋、丸の内を走り、最後に日比谷でゴミ拾いして戻りました。
夜は、「デモクラシーフェスティバルジャパン第4回対話祭り【オンライン版】3月1日、2日、3日開催!」に出展しました。銀座ソーシャル映画祭テーマにあれこれ話し、対話を楽しみました。
https://www.democracyfestivaljapan.jp/
※写真は上映会後に出展したオンラインイベント「デモクラシー フェスティバル ジャパン」の様子です、

根本的に対立の原因が宗教にあるのだとしたら、本来人が生きやすくするためのにあるはずの宗教が彼女たちを苦しめているように思えてならない。
映画を見始めてしばらくの間は、綺麗な町並みやビーチ、子どもたちの弾ける笑顔、タクシーのドライバーが仕事前に海を見ながらカフェラテを飲むシーンなどが続き、ガザの日常を生きる人って、私たちと同じだな、と感じました。
でも、それから、ガザを取り巻く惨状や若者の姿、よくみたらガリガリに痩せた子どもたち、難民キャンプを襲う襲撃に、ガザの日常が「異常」であることに気づきました。
この時期にこの映画を見ることができてよかったです。
自分にできることがないか、考えてアクションしたいです。