救急外科医になる夢を叶えるためにガザ地区に留学したイタリア人医学生の葛藤や成長を描くドキュメンタリー。
©2021 Arpa Films
About the film
救急外科医を目指し欧州から初の留学生としてガザへ
イタリア人医学生のリッカルドは、奨学金を得て留学することを決意した。行き先は紛争地域であるガザ地区。友人たちは彼の安全を心配し、動揺を隠せない。しかし将来は救急外科医になりたいと考え、爆発性弾丸による外傷についての論文を書いている彼にとってのガザ行きは、医師となるための実践経験になる。周囲をフェンスで封鎖された「天井のない監獄」と呼ばれるガザに入るのは容易ではない。イスラエル、パレスチナ自治政府、そしてハマスの3つの異なる当局からの許可を得なければならないからだ。極めて複雑なプロセスを経て、欧州から初の留学生としてガザ・イスラム大学に到着すると、学長に歓迎され、ガザ内外のメディアから次々とインタビューを受けることになる。
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緊迫する医療現場で医師となる決意を固めていく
多くの期待と注目集める彼はプレッシャーを感じ始める。救急医療の現場に入り、本当に外科医に向いているのかと自らに問うなど、不安やストレスに潰されそうになる。悩むリッカルドを救ったのは、同じく医師を目指す医大生サアディなどのパレスチナ人の若者たちだった。やがて片言のアラビア語を話す彼は現地で人気者となり、徐々に自分の居場所を見つけていく。しかし、イスラエルとの紛争が再燃すると、リッカルドは難しい選択を迫られる。安全のためガザを一時的に離れた彼は、ガザを出られない友人達に心配を募らせる。しばらくしてガザに戻り、無事だった仲間との再会を喜び、絆を深めていく。そしてすぐに、緊迫する救急医療の現場へと飛び込み、傷ついた人々の治療に当たっていく。至近距離で爆撃を受ける体験をしながらも、彼は救急外科医になる決意を固めていく。
Data
原題 |
Erasmus in Gaza |
製作年 |
2021年 |
製作国 |
スペイン |
制作 |
アルパ・フィルムズ・プロダクション |
配給 |
ユナイテッドピープル |
時間 |
88分 |
Cast & Staff
監督 |
チアラ・アヴェザニ、マッテオ・デルボ |
製作総指揮 |
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プロデューサー |
エヴァ・フォンタナルス |
原作 |
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脚本 |
チアラ・アヴェザニ |
音楽 |
ミケーレ・ストッコ、ミルコ・カルチェン、 アレッサンドロ・グロッソ |
撮影 |
マッテオ・デルボ |
編集 |
アントニオ・ラッブロ・フランチャ |
キャスト |
リッカルド・コッラディ-ニ、サアディ・イェヒア・ナクハラ
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上映者の声
上映会を主催された方の声を紹介します
日比谷での上映を拝見し、エンドロールの前にすでに地元での上映会を決心していました。
この映画は、留学生のリッカルドの目を通してありのままのパレスチナの生活や文化を知るとともに、イスラエルによる占領の現実も実感できる内容です。
つらい場面もありますが、ガザの若者たちとの友情や信頼、冗談を言い合ったりダンスやサッカーを共に楽しんだりする姿には温かい気持ちになります。
ガザで育つ若者も日本やイタリアの若者も、人間として何も変わらないという当たり前のことが実感できます。
パレスチナの状況に関心がある人とない人では、触れている情報に大きなギャップがあります。一般の報道しか見ていない人は、「過激派が支配している紛争地」「宗教的な憎しみの連鎖」といったステレオタイプでしか捉えていません。
ガザの状況をなんとかしたいと願う人たちの中には、そうした周囲の無理解に傷つき、個人でできる限界を超えてお金や体力を注ぎ込んでバーンアウトしてしまう人もいます。
その溝を埋めるために、こうした映像作品を通じて生の姿を見てもらうことが一番だと感じます(もちろん、現在はそれがほとんど失われてしまったという現実に打ちのめされるのですが)。
デモやスタンディングといった形での発信もできますが、映画は文化的な催しとして扱われるので、警察や行政との緊張関係も少なく、一般の人に参加してもらいやすいと思います。
まず知ってもらい、行動につなげてもらう。入り口はなるべく敷居が低いに越したことはありません。
今回の上映会では、本編のあとにリッカルドさんのインタビュー動画を上映したので、現在の状況の補足もバッチリでした。
参加者がどのくらい来てくれるかハラハラしていましたが、なんとか赤字を出すことなく成功できホッとしています。
ぜひ全国で上映会を広げてほしいです。
昨年11月と3月に開催したガザ3部作の1つ『医学生 ガザへ行く』の上映会でした。前回の参加くださった方も参加いただきました。上映後に、リッカルドさんのメッセージを見て、現在のガザがどうなっているのかという話し合いがありました。改めて今のガザの現状を知るきっかけになり良い上映会でした。
みなさん熱心にご覧になっておられました。「言葉が出ません。ラストに『地獄にあって何が地獄でないか見極めること』との言葉が心に残りました」というコメントをいただきました。良きお客様に恵まれています。
感想のシェアでは、グループに分かれ、それぞれが熱心に言葉を探しながら語り合いました。いくつかご紹介しましょう。
ニュースを見るパレスチナは瓦礫の山だと泣き崩れる人びとの姿だけれど、ともに未来を夢見て学び、笑いあう姿を見ると、なおさらその理不尽さが感じられる。
この映画が作られたときからさらに紛争は激化し、今や一方的に殺戮が行われている感のあるガザ。映像の頃よりさらに街の姿も変わっていると思うと心が締め付けられるようです。
ひとりひとりが意見を表明することを、日本での普段の暮らしの中ではあまりしませんが、意見を言い続けることが大事なのでは?
虐殺と言い切ることは海外では普通だけれど、日本ではあまり見ない。
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映画を見た時だけでもいいから、自分の意見を表明すること、そこからはじまって、友人などと分かち合うこと、人に押し付けるのではなく、自分から行動することと進んでいけるといいといつも思います。
映画にはそういう力があると思います。今回は、ガザの外側の人の視点が描かれることで、いっそう親しみやすかったと感じます。
今後も上映を続けて平和を語り続けていきたいと思いました。
主人公の医学生リッカルドにとって、ガザに生きる人々が
家族になっていきます。余計な説明や言葉がなくても、視聴者は自らをリッカルドに重ねまるで自分もそこにいるかのような気持になれる作品です。
ガザでは全ての大学が爆撃され、多くの病院も攻撃の対象になり破壊されてしまっています。1日、一刻も早い停戦、占領の終了を願います。
・Aさん
映像を通して、ガザ地区ではいつ爆撃されるかも分からない現状であり、それに対しての恐怖心を日々感じている。日本は憲法9条があるため、戦争をすることはないが、ガザ地区ではこのような憲法はないため、爆撃は無差別にやってくる。そのためいつ命が無くなるかも分からない。また、その影響によって日々の生活に苦しむ人もいる。このような状況だと、人権が保たれていないと感じた。支援募金などを通して、少しでも苦しい生活が楽になるように協力して行きたい。
・Bさん
ガザの現状を知り、私は平和の重要性を考えた。ガザのように夜に爆弾が飛び、いつ自宅に当たってしまうか分からない状態、また、自宅がなくなってしまうかもしれない状態で過ごすことは精神的、身体的につらい状態であると考えた。そして、現在のリッカルド・コッラディーニさんのメッセージから、平和を求めることの大切さを学んだ。私たちの世代は戦争を経験していない人々が多い。そのため、未来でも平和のままでいられるように戦争の悲惨さを伝えていきたい。そして、現在戦争を行なっている国は一刻も早く終戦し、少しでも多くの人々が安心して暮らしていけるようにするべきであると考えた。